テキサスで拠点を選ぶときの6つの確認点
テキサス州は、州の個人所得税がないことなどから、米国進出の候補地として名前が挙がることの多い州です。ただ、同じ州の中でも、顧客との距離、税の負担、災害リスク、使える優遇策は場所ごとに変わります。公的な情報をもとに、候補地を比べるときの確認点を整理します。
Pisco Group 編集 公開 2026.10.23
最初に決めるのは、州よりも顧客の場所
製造業の拠点は、売り先や修理を受ける顧客に近いことが、最も効くと私たちは考えています。納期、立ち会い、緊急時の駆けつけやすさは、距離でほぼ決まるためです。州の税制や優遇策は、顧客の場所を決めたうえで、候補地を比べる材料として使うのが順番として無理がありません。
私たちが拠点を置くヒューストンについて言えば、石油化学、エネルギー、LNGの産業が集まり、回転機械や産業機械の需要が大きい地域です。ご自身の製品の顧客がどこに集まっているかを先に確かめてください。
6つの確認点
1. 顧客と市場への距離
主要な顧客の工場や事業所まで、車や飛行機でどれくらいかかるかを確認します。据付や修理で技術者を派遣する場合、移動時間はそのまま費用と対応速度になります。複数の顧客がある場合は、顧客が集まる地域の中心に近い場所が候補になります。
2. 物流と輸入:港と外国貿易地域(FTZ)
日本から部品や製品を輸入する場合、港までの距離と通関の負担が関わります。ヒューストン港(Port Houston)は、ハリス、ウォーラー、ウォートンの各郡に、港が所有する用地と民間所有の用地を含む外国貿易地域(FTZ)第84号を管理しています。Port Houstonによると、FTZ内の商品は米国の関税領域の外にあるものとして扱われ、米国の商取引に入るまで関税や物品税は課されません。関税の繰り延べ、再輸出する場合の関税の免除などが利点として挙げられています。
同じくPort Houstonによると、ヒューストン地域にある既存の倉庫や工場をFTZの用地に切り替えることもできます。利用を考える場合は、Port Houstonの経済開発チームに連絡することが入口とされています。制度の全体像は、米国のFTZ委員会(Foreign-Trade Zones Board)の案内でも確認できます。自社の輸入品に当てはまるかどうかは、通関業者や専門家に確認してください。
3. 税の負担は場所で変わる
テキサス州憲法第8条第24-a項は、州議会が個人の純所得に課税することを認めていません。個人の組合などの持ち分に係る所得も含まれます。州の個人所得税がないと言われる根拠はここにあります。ただし、税の負担はそれだけでは決まりません。
固定資産税:テキサス州会計監査官室によると、州の固定資産税はなく、学校区、市、郡、特別区など地元の課税主体がそれぞれ税率を決めます。課税主体は4,796を超えるとされ、評価額は郡の評価区が毎年1月1日時点で査定します。同じヒューストン周辺でも、工場の所在地によって税率が違う可能性があります。候補地ごとに、郡の評価区か税の徴収担当に確認してください。
売上税・使用税:同じく会計監査官室によると、州の税率は6.25%で、地元が最大2%を上乗せでき、合計の上限は8.25%です。住所から税率を調べる検索ツール(Sales Tax Rate Locator)が公開されています。
フランチャイズ税:州内で設立された事業体や、州内で事業を行う事業体にかかる税です。ここでは概要にとどめます。仕組みと法人の設立については、米国法人の設立と税務の基礎を参照してください。
4. 優遇策:州と地元の両方に聞く
テキサス州知事室の経済開発・観光局は、州の優遇制度をまとめています。たとえば、雇用創出と設備投資が大きく見込まれ、テキサス州内の1か所と州外の有力な候補地が競合している案件を対象とするテキサス・エンタープライズ基金、大規模で資本集約的な案件向けのJETI法、エンタープライズゾーン制度などです。制度ごとに対象となる規模や条件は異なるため、小規模な進出に当てはまるかどうかは、窓口に直接確認する必要があります。
この案内ページには、地元の優遇や固定資産税の減免は含まれておらず、地元の経済開発の担当者に問い合わせるよう書かれています。州と地元の両方に聞くことが前提です。このほか、日本の機関では、ジェトロ・ヒューストン事務所や、ジェトロの「外資に関する奨励(米国)」のページも手がかりになります。
5. 災害リスク:洪水の想定を地図で確認する
米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の洪水地図サービスセンターでは、公式の洪水ハザードマップを住所で検索できます。候補地の住所を入れて、洪水の想定区域に入っているかを確認してください。あわせて、保険会社にも相談し、その場所の保険の条件を早めに把握しておくと安心です。
6. 建物・設備と人
建物は、立地と同じくらい運営に影響します。内見のときに、次の点を確認します。
- 天井クレーンの能力と高さ
- 床の耐荷重
- 受電容量と電圧
- 搬入口とトラックの動線
- 試験に必要な水・電源・排水
- 周辺の機械加工・溶接などの協力会社
- 技能者の採用のしやすさ
人については、州の制度の一つにスキル開発基金(Skills Development Fund)があります。テキサス州労働委員会が運営し、公立のコミュニティカレッジや技術系の大学が、地元の企業向けにあつらえた職業訓練を行うための資金を支える制度とされています。使えるかどうかは、地域の窓口に確認してください。
まず借りて試すという方法
土地や建物を買う前に、既存の工場の一部を借りて小さく始める方法があります。設備と人を最初から抱えず、現地で受注と運営が回るかを確かめてから、拠点の規模と場所を決められます。
Pisco Groupでは、ヒューストンの約1,000㎡の自社工場(10トンの天井クレーン2基)の一部を使う、工場シェアでの試行を用意しています。これは、初期支援の段階2にあたります。詳しくはこれから米国に進出する企業へと、現地での加工・組立・試験をご覧ください。
Pisco Groupの場合
Pisco Groupは2007年にヒューストンで創業し、この地で工場を運営してきました。候補地を比べる前の論点整理や、工場シェアでの試行をお手伝いします。一方で、用地の売買・賃貸の仲介や、優遇策の申請代行は行いません。これらは、地元の経済開発機関や専門家と連携して進めます。全体の流れは、米国進出の進め方(製造業向けロードマップ)で整理しています。
出典・参考資料
- テキサス州憲法 第8条(テキサス州議会)
- フランチャイズ税(テキサス州会計監査官室)
- 固定資産税の基礎(テキサス州会計監査官室)
- 売上税・使用税(テキサス州会計監査官室)
- 優遇制度の案内(テキサス州知事室 経済開発・観光局)
- 外国貿易地域(FTZ)の案内(Port Houston)
- 外国貿易地域委員会(Foreign-Trade Zones Board)
- 洪水地図サービスセンター(FEMA)
- ジェトロ・ヒューストン事務所(ジェトロ)
- 外資に関する奨励(米国)(ジェトロ)
本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な情報であり、法務・税務・移民に関する助言ではありません。制度や金額は変更されることがあります。具体的な判断は、米国の弁護士・会計士などの専門家と、各機関の最新情報でご確認ください。
よくあるご質問
テキサスには法人の税金もないのですか。
いいえ。テキサス州には個人の所得税はありませんが、州内で設立された事業体や州内で事業を行う事業体には、フランチャイズ税がかかります。テキサス州会計監査官室によると、2026年・2027年の報告の税率は0.75%(卸・小売は0.375%)で、総収入等が265万ドル以下なら納税額はゼロです。ただし、その場合も報告は必要です。詳しくは専門家にご確認ください。
優遇策はどこに相談すればよいですか。
州の制度については州知事室の経済開発・観光局、地元の優遇や固定資産税の減免については地元の経済開発の担当者に問い合わせるよう、州は案内しています。
工場を建てる前に試すことはできますか。
できます。Pisco Groupでは、ヒューストンの自社工場の一部を使って、加工・組立・試験を小さく始める工場シェアを用意しています。拠点を決める前に、現地での運営を確認できます。
候補地を絞る前の段階からご相談ください。最初のご相談は無料です。
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