後継者がいない町工場、これからどうするか 選べる道と最初の一歩
「継ぐ人がいない」と気づいたとき、多くのオーナーさまは一人で抱え込みます。この記事では、町工場に残されている道と、急がずに始められる最初の一歩を整理します。結論を急ぐ必要はありません。
Pisco Group 編集 公開 2026.10.23
1. 後継者がいないのは、めずらしいことではありません
まず、ご自身を責めないでください。帝国データバンクの2025年の調査(全国約27万社が対象)では、後継者がいない会社の割合は50.1%でした。前年から2.0ポイント下がっていますが、それでも全国で、およそ2社に1社です。中小企業白書2025も、後継者不在率は減少傾向にあるとしています。
数字が改善しているとはいえ、目の前の会社に後継者がいない事実は変わりません。ただ、同じ悩みを持つ会社が数多くあるため、国や金融機関などの相談の仕組みも整えられてきました。一人で悩み続けなくてよいということです。
2. 決める前に、ご自分に3つ聞いてみてください
手続きや相手探しの前に、次の3つを紙に書き出してみてください。ご家族と一緒に話すと、整理しやすくなります。
- 会社は続けたいか、区切りをつけたいか仕事は続いてほしいのか、ご自身の代で終えてもよいのか。どちらでも構いません。
- いちばん守りたいものは何か従業員の仕事、取引先との関係、長年の技術、社名、設備と工場の建物、ご家族の暮らし。守りたいものの順番が、選ぶ道を決めます。
- いつごろまでに、どのくらい関わりたいか来年には退きたいのか、数年かけて引き継ぎたいのか。体調やご家族の事情も含めて考えます。
3. 町工場に残されている3つの道
大きく分けると、道は3つです。どれが正しいということはありません。
| 親族・社員に引き継ぐ | 外部の第三者に引き継ぐ(事業承継) | 廃業する | |
|---|---|---|---|
| どんな形か | お子さま、親族、長く勤めてくれた社員に会社を託す。 | 株式や事業を、外部の会社や個人に譲る。 | 事業を終え、設備や在庫を整理する。 |
| よい点 | 人柄や仕事ぶりをよく知る人に託せる。 | 会社や技術を、形を変えながら残せる可能性がある。対価を受け取れる場合がある。 | ご自身のペースで区切りをつけられる。 |
| 気をつけたい点 | 本人に引き継ぐ意思と力量が必要。株式の承継や資金の準備に時間がかかることもある。 | 相手との相性や条件のすり合わせに時間がかかる。相手選びが大切。 | 従業員の仕事、取引先への影響、長年の技術が途切れる。 |
この記事では、検討が進んでいない方が多い「外部の第三者に引き継ぐ」道を、もう少し詳しく見ていきます。「会社を売る」と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃいますが、実際は「託す相手を選ぶ」作業に近いものです。
4. 最初の一歩は、無料で相談できる窓口です
相手を探す前に、まず相談だけしてみる。これがいちばん負担の少ない始め方です。
事業承継・引継ぎ支援センター
国が運営する相談窓口です(産業競争力強化法にもとづく)。相談は無料です。センターは、登録された民間のM&A支援機関や金融機関につなぐことがあり、全国47都道府県で情報を共有しています。譲り受けを希望する側は、センターと面談したうえで「譲受希望登録」を行い、その情報は公開されません。
身近な方への相談
取引金融機関、商工会議所・商工会、顧問の税理士さんも、相談相手になります。それぞれの特徴は、下請けの事業承継の相談先で整理しています。
どの窓口でも、相談したからといって、承継を決める必要はありません。「話を聞いてみただけ」で構いません。
家族に話す
相談先と同じくらい大切なのが、ご家族です。会社の株や個人の保証、工場の土地や建物がご家族の暮らしと結びついている場合は、早めにお話しください。あとから知ったご家族が戸惑うことが、いちばんの後悔につながりやすいためです。
5. 託す相手を見極める6つの問い
外部の第三者に引き継ぐ場合、条件の前に、相手を見極める目が必要です。次の点を、遠慮なく聞いてみてください。
- 誰が、この会社を実際に経営するのか
- 技術と現場を、どう引き継ぐ考えか
- 従業員や社名を、どう扱うつもりか(約束でなく、考え方を聞く)
- 費用や手数料は、誰にどれだけ発生するのか
- 承継後、ご自身はどう関わることになるのか
- 話が進む前に、秘密保持契約(NDA)を結べるか
相手探しを仲介業者やFA(フィナンシャル・アドバイザー)に頼む場合は、国の「M&A支援機関登録制度」で登録されているかを確認できます。
6. 急がないほうがよいこと
- 従業員や取引先に伝えるタイミング。早すぎると不安を広げ、遅すぎると信頼を損ないます。誰に、いつ、何を伝えるかは、相談先と一緒に決めましょう。
- 最初に来た提案への返事。比べる相手がいないと、よい条件かどうか判断できません。
- 書類にサインすること。内容がわからないまま進めず、必要なら税理士や弁護士に見てもらってください。
7. 選択肢のひとつとして、Piscoの場合
東京を拠点に事業承継を検討し、米国で生かせる技術は、宇宙航空機産業・回転機械のメッカであるヒューストンを拠点に生かし、次の世代につなぎます。
Pisco Group, LLC(米国テキサス州ヒューストン)は、自社で工場を持つ製造業のグループです。仲介業者ではなく、引き継ぐ側の立場で、製造業のオーナーさまからのご相談を受けています。承継を検討している会社の目安は、次のとおりです。当てはまるか迷う場合も、まずご相談ください。
- 売上10億円まで、従業員10名まで
- 所在地:関東・北九州
- 業種:機械加工業、金属加工業、溶接業、製缶製作、その他産業機械関連
- 独自の技術があり、後継者がいない
日本での譲受けは、国内の関係会社または関係者が行い、Piscoの米国工場とグループの経営資源(設備・工程・販路)で技術を生かします。
- 手数料はかかりません(仲介ではなく、引き継ぐ側として直接お話しするためです)。
- グループの設備や工程などの経営資源を生かして、技術を引き継ぎます。
- 対価をお支払いします。金額は交渉で決め、時期も柔軟に考え、承継の形は会社ごとに話し合います。
- ご希望があれば、承継後もオーナーさまに顧問として残っていただく形も考えられます。
- 詳しい情報をお預かりする前に、秘密保持契約(NDA)を結べます。
- 社名は残します。
- 従業員の雇用と処遇は原則として維持します。
- 旧オーナーさまの個人保証は、原則として解除する方針です。解除に向けた金融機関との交渉は、譲受け側が責任を持って行います(最終的な判断は金融機関によります)。
承継のあとに起きやすい問題と、Piscoの考え方
事業承継では、成約したあとにも、従業員の不安、取引先との関係、職人技術の属人化、個人保証・借入の扱い、簿外債務・偶発債務など、起きやすい問題があります。中小企業庁の「中小PMIガイドライン」は、従業員へ遅滞なく等しく説明することやキーパーソンとの面談、成立直後に譲渡側の経営者とともに主要な取引先を訪問して継続的に対話することなどを挙げています。また、株式譲渡は簿外債務・偶発債務のリスクが比較的高く、詳細な調査が必要とされ、事業譲渡は債務を遮断しやすいとされています。経営者保証については、「中小M&Aガイドライン」と「経営者保証に関するガイドライン」の特則により、事業承継時の二重徴求は原則として禁止されています。
Piscoは、自社で工場や工程を運営する事業会社として、クロージング後も経営に関わります。米国での技術の需要や販路で仕事量を支え、現場を理解する技術者・工場運営の経験をもとに、元オーナーさまには、ご希望に応じて有償の顧問として関わっていただく形も相談できます。社名は残し、従業員の雇用と処遇は原則として維持します。旧オーナーさまの個人保証は、原則として解除する方針です。解除に向けた金融機関との交渉は、譲受け側が責任を持って行います(最終的な判断は金融機関によります。中小企業庁の資料も参照)。設備投資などは、個別に協議します。結果をお約束するものではありません。問題ごとの整理は事業承継のご案内をご覧ください。
正直にお伝えしておきたい点もあります。外為法では、外国投資家(外国法人や、非居住者である個人など)が、指定された業種(工作機械・産業用ロボットの製造業、半導体製造装置、軍事転用が可能な汎用品の製造業など)を営む非上場会社の株式を1株でも取得する場合は、原則として日本銀行を通じた事前の届出と、国による審査が必要とされています。国内の買い手による譲受けでは、通常、対内直接投資の届出は想定されませんが、外国資本が50%以上の国内会社などは外国投資家にあたるため、案件ごとに専門家と確認します。該当するかを事前に確認し、必要な届出は法令に沿って行います。審査の結果についてお約束することはできません。
Piscoが合うかどうかは、会社の業種や所在地、オーナーさまのお考えによります。合わない場合も、ほかの道の相談先をお話しできます。詳しくは事業承継のご案内をご覧いただくか、秘密厳守のご相談からお問い合わせください。
出典・参考資料
- 全国「後継者不在率」動向調査(2025年)(帝国データバンク)
- 中小企業白書2025 第9節 事業承継(中小企業庁)
- 事業承継・引継ぎ支援センター「譲受希望者の方へ」
- 中小機構 事業承継・引継ぎ支援センターの連携(第三者承継の支援)
- M&A支援機関登録制度
- 外国為替及び外国貿易法に基づく対内直接投資等(財務省)
- 対内直接投資等に関する事前届出のパンフレット(関東財務局)
本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な情報であり、法務・税務・金融に関する助言ではありません。制度の内容は変わることがあります。具体的な判断は、各機関の最新の案内と、税理士・弁護士などの専門家でご確認ください。
よくあるご質問
後継者がいないと、廃業しかないのですか。
いいえ。親族や社員への承継、外部の第三者への承継(事業承継)、廃業の3つの道があります。無料で相談できる公的な窓口もあるため、まず状況を伝えてみてください。
相談したら、必ず会社を譲らないといけませんか。
いいえ。相談は決断ではありません。事業承継・引継ぎ支援センターの相談は無料で、話を聞くだけでも構いません。
相談していることは、従業員や取引先に知られますか。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、譲受希望者の登録情報は公開されません。相手に詳しい情報を渡す前には、秘密保持契約(NDA)を結ぶのが一般的です。従業員や取引先に伝える時期は、相談先と一緒に決めるとよいでしょう。
海外の会社や、海外に拠点のある方に譲ることはできますか。
できる場合があります。ただし、外為法で届出が必要になる業種があります。外国法人や非居住者である個人は外国投資家にあたり、外国資本が50%以上の国内会社なども同様です。Piscoでは、該当するかを案件ごとに事前に確認し、必要な届出を法令に沿って行います。
残したいものと、いまのお気持ちをお聞かせください。初回のご相談は無料です。日本語で、秘密厳守で承ります。
秘密厳守で相談する